岸田繁と聴くクラシック Vol.3

<おしらせ>
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interview & text:青澤隆明
photos:武藤 章

岸田繁が個人的なクラシック音楽の個人的な敬愛について語るロング・インタビューの3回目。今回は、ヨハン・シュトラウス、バルトーク、ショスタコーヴィチについて。『ワルツを踊れ』とヨーロッパのダンス・ミュージックの関係とは?

──ヨハン・シュトラウスはどこがいちばん好きですか?

クラシック音楽の歴史からウィーンは外せないわけで、ニューヨークにいってエンパイアステートビルみてキング・コングって思ったり、柴又行って寅さんと思う感じを、ウィーンにいたときに、もう肌で「これはもうヨハン・シュトラウスでしかない」という雰囲気とスピードを味わったので。

──無条件降伏みたいな感じ?

無条件降伏です。でも、実際にウィーンの演者たちが、ワルツのリズム、訛りについて説明してくれるんですけど、こっちはそのようには演奏できないんですよ。

──ウィーンに行って、たちまち『ワルツを踊れ』、と言うわけではなかった……。

とは言わないです(笑)。『ワルツを踊れ』のアルバムをつくってたときは、謎やったんです。なんでこういうステップなんかな、なんでこういう拍なんかなというのは、こいつらがこういう人やからって思ってて。でも、それが踊りたい、そのリズムの感じってなんなんやろう、ってずっと思ってたんですけど。

そのリズムがいちばん分かったのは、ほんまに酒場で酔っぱらって踊ってみて。その後、「Remember me」の録音でウィーンを訪れたときです。そのへんのおばちゃんが「おいでよ」って言って、大道芸人がアコーディオンで「テレレレー、チャッチャッ、チャッチャッ」とかやってるわけですよ。ステップを教えてもらって、それに合わせて踊ったら、「あ、ほんまやー!」みたいな、身体の動きがリズムにぴったりで。 「これや!」ってハマったときに、「ああ、やっぱりダンス・ミュージックが、ダンスが音楽つくるんやな」ということを、身をもって体験できた。もともと興味はあったんですけど、身体表現そのものというよりも、なにかの動きとダンスと音楽の相関性というのは、いまも興味があるので、そこからバルトークの奇数拍子とか、そっちにもっていかれました。

だから、『ワルツを踊れ』の制作でウィーンに行ってたときは、いろんなコンサート観られて、ほんまに収穫あったんですけど、ヨハン・シュトラウスはヤバイと思ったのと、たまたまバルトークの『弦、パーカッション、チェレスタの音楽』をシンフォニカーのほうで観てまずバチーンともっていかれて。そのときにいくつかいい曲を聴いて、『弦チェレ』とショスタコーヴィチのヴァイオリン・コンチェルトの2番はすごく聴きましたね。

──リズムが身体に落ちてきた。ヨーロッパのダンス・ミュージックということですね。

ヨーロッパのダンス・ミュージックですね。で、それがなんなのかわからないわけですよ。ブルガリアやルーマニアで農作業していた人が踊ってたやつをバルトークが採譜して西洋音楽に落とし込んだものだと思うんですけど、そのバルトークの音楽をルーマニアのおばちゃんたちが踊れるかといったら、それはまたべつのもんになってると思う。でも、明らかにぼくがそれまで知ってるビートではなかった。和音的には、すぎやま先生を聴いていたので、ぼくはもともとバルトーク耐性があって(笑)、不協和音に聴こえないので。ショスタコーヴィチのヴァイオリン・コンチェルトはやっぱり、ぼくは交響曲だと5番とかよりも4番とか9番が好きですけど、危ういメロディーに惹かれたと言うんですかね。

──どっちつかずで、タイトロープな感じ。

タイトロープですよね。バルトークとかよりも、もっと明らかに調性音楽において、非調性音楽みたいな、あかん瞬間をつくったりするじゃないですか。

──そっちのほうが怖いですよね。

そう。で、冗談が過ぎるという。ショスタコって嫌な人は絶対嫌やろうなって思いますし。好きな作品はいくつもあるんですけれど、ぼくの交響曲第二番の初演のコンサートでも演奏してもらった室内交響曲(バルシャイ編 Op.83a第1楽章)もすごい好きで。やっぱりショスタコーヴィチの曲のなかでは、すごく素朴というかな、彼ならではのサービス精神はないし……。

──なんか、すーっとしてるんですよね。

そうですね。で、「ああ、もともとロシアのなかでも、ちょっと自然に近いところにいる素朴な人なのかもね」って、そのとき勝手にイメージして。なんか天才肌やけど、なにかができない、欠落がすごくみえるみたいな。そういう素朴な感じがして、それでぼくはショスタコーヴィチのこともすごく好きになって。ヴァイオリン・コンチェルトもやっぱり、ラフマニノフのように流暢な美しい、メロドラマっぽいふうにしたいんやろうけど、なんか骨が出ているというか。そういうとこも含めて、ショスタコーヴィチはすごい好きです。

それって、いまの時代っぽくもないとも思うんですよ。その感じって、武骨すぎるというか。寅さんとかって、いまの時代にはあかんやないですか、絶対叩かれるやないですか。でも、その部分って、やっぱりすごく魅力で。ざらっとして、やすりがかかってない。『ジャズ組曲』もすごい好きで、「どこがジャズなんですか?」ってみんな思うけど、なんでもいいと思うんですよね。リヒャルト・シュトラウスやラヴェルの完璧な感じよりも、ぼくはなんかショスタコーヴィチのちょっと脇の甘い感じというか、そういうところに惹かれます。

Vol.4につづく
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Vol.2はこちら


profile
岸田繁(Shigeru Kishida)

京都府生まれ。ロックバンドくるりのフロントマン。作詞作曲の多くを手掛け、多彩な音楽性で映画のサントラ制作、CMやアーティストへの楽曲提供も行う。2016年より京都精華大学にて教鞭を執り、2018年には特任准教授に就任。京都市交響楽団の依頼を受け完成させた初の交響曲「交響曲第一番」に続く「交響曲第二番」を発表した。​最新作は、2019年4月発表の『リラックマとカオルさん オリジナル・サウンド・トラック(NETFLIXオリジナルシリーズ)』。

information
岸田繁 「交響曲第一番・第二番 連続演奏会」
2019.10/5(土)14:30 京都コンサートホール大ホール

出演:岸田繁、広上淳一、京都市交響楽団
https://shigerukishida.com/

CD『岸田繁「交響曲第二番」初演』

広上淳一(指揮)
京都市交響楽団
VICC-60955
ビクターエンタテインメント ¥2500+税

CD『岸田繁「交響曲第一番」初演』

広上淳一(指揮)
京都市交響楽団
VICC-60944
ビクターエンタテインメント ¥2500+税

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