反田恭平(ピアノ・指揮) ロング・インタビュー Part2

interview & text:オヤマダアツシ
photos:野口 博

反田恭平のアイデアにより創設された「MLMナショナル管弦楽団」。反田と共に立ち上げメンバーの中心となったのが「MLMダブルカルテット」でも名演を聴かせてくれたヴァイオリンの岡本誠司とチェロの森田啓佑だ。インタビューの後半は2人が加わり、今後の展開なども聞いた。

左より:岡本誠司、反田恭平、森田啓佑

互いに存在を意識し、 MLMへと続く3人の絆

──CDはどういう形でリリースされるのでしょうか。

反田 メンバーそれぞれの演奏を聴いていただくため、今回の会場で10人のメンバーそれぞれがミニ・アルバムを1枚ずつ、500円で販売します。ピアノは全部僕が演奏したのですけれど、知らない作曲家や曲もたくさんあって、自分でアイデアを出したのに大変でした。もちろんメンバーには名刺代わりとして活用して欲しい。一方では、子供たちにもCDを聴いて、オーケストラの楽器や音色を知ってもらいたいという目的もあるのです。今回はサントリーホールのライヴからモーツァルトのコンチェルトをネット配信しますし、森田君のCDとして、岡本君とラフマニノフのピアノ三重奏曲を録音しました。もちろん今後も、録音を希望するメンバーとは同じようにCDを作っていきたいです。

──その岡本さんと森田さんにもお話しに加わっていただきますが、まずオーケストラの構想を聞いていかがでしたか。

岡本 僕は、2016年の夏にプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番を一緒に演奏する機会があり、MLMダブルカルテットに呼んでもらって、もっと一緒に演奏できる機会を作りたいと思っていましたから、オーケストラの話を聞いたときはうれしかったですね。その時にもメンバー全員で積極的に意見交換ができたり、演奏してみるとピアノも含めてみんなから「こうしようぜ」という会話が聞こえてきたんです。そういう体験があったからこそ「オーケストラ、いけるんじゃないか」と思えましたし、メンバーの中にはオーケストラ経験がすでに豊富な人もいますから、可能性は広がるなと感じています。

反田
 僕はMLMダブルカルテットの構想を考えたとき、まず岡本君に声をかけようと思いましたから!

森田 僕は、いつだったか……京王線の仙川駅で初めて聞きましたよ。

反田 駅!(笑)そうだった。2017年の冬じゃなかったかな。

森田 さっきのCDの話で思い出しましたが、たしかにMLMダブルカルテットで僕のことを知ってくれた方が、リサイタルを聴きに来てくれたことがあり、こういうつながり方や広がり方はいいなと実感しました。

岡本 森田君とは、小澤征爾さんの室内楽アカデミーに参加したとき、一緒に組んだアンサンブルで弾きましたね。あのときから、また共演したいなと思っていました。

反田 森田君のことを僕は高校生の頃から知っていました。でも共演したわけではなく、桐朋の高校にチェロも上手だけれどサッカーも上手いやつがいるって聞いて、たしか桐朋の体育大会で初めて会ったんだよね。岡本君も森田君も1年ぶりくらいで一緒に弾くと音楽が変化していて、同じメンバーなのにまったく新しい音楽ができるからワクワクするんです。おそらくオーケストラのメンバーみんな、そういう発展期にあるんじゃないかと思います。

左:岡本誠司 右:森田啓佑

夢はコンセルヴァトワールの設立 さまざまなアイデアを試したい

──今回のツアーは5回のコンサートのみですが、それ以降の活動はどのようなことを考えていますか。

反田 方向性はこの2人を含め、中心となるメンバーで進めていきます。演奏する曲によって楽器編成も広げないといけませんし、新メンバーのオーディションも考えています。カーテンで仕切って演奏だけを聴き、自分たちの耳だけで選びたい。

岡本 かなり本格的なオーディションになっちゃうけれど、そこは僕もこだわりたいですね。

反田 実は将来的にとても大きな夢があって、それは自分たちで学舎(まなびや)、コンセルヴァトワールを作りたいということなのです。そこで若い世代の人たちに音楽を教えたい。MLMナショナル管弦楽団はその専属オーケストラとしても活動し、生徒たちがコンチェルトを演奏する機会も作りたい。そういうことも視野に入れて、僕自身はもっと社会経験を積んで経営的な知識も身に付け、周囲の方たちにもたくさんお話しをうかがって、50歳くらいになったときに学舎を軌道に乗せたいのです。

岡本 たちはまだ若手と呼ばれる世代ですけれど、次世代につなげたいという思いにはとても共感できますし、もし自分たちが30代、40代と歳を重ねる中で日本の音楽界に何か貢献できるのであれば、それは積極的にやってみたいですよね。

──今回のコンサートツアーが、そうしたことへのスタート地点になりそうでしょうか。

反田 そのつもりです。今まではコンサートでもCDでも信頼できる方にお任せしてきましたが、自分たちで経験を積みながら視野も広げたい。

岡本 コンサート後のサイン会などでも、いろいろなご意見をいただけますし、曲のリクエスト調査もやってみたい。もっと攻めた選曲ができるかもしれないし、子供たちのためのワークショップなど新しいことができるかもしれませんから。何より今回は、このメンバーでどういう演奏ができるのかを見極め、そこから新しいアイデアが生まれるだろうなという期待ももっています。

反田 公開リハーサルもやりたいし、コンサートの曲目紹介を演奏家自身が書いてもいい。YouTubeなどの動画サイトやSNSも活用していくつもりです。

森田 このオケから新曲を委嘱するということもありですよね。

反田 もちろん!

=了=

Part1はこちら

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Profile
反田恭平(Kyohei Sorita)

1994年生まれ。2012年 高校在学中に、第81回日本音楽コンクール第1位入賞。併せて聴衆賞を受賞。2013年M.ヴォスクレセンスキー氏の推薦によりロシアへ留学。2014年チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に首席で入学。

2015年イタリアで行われている「チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール」古典派部門で優勝。年末には「ロシア国際音楽祭」にてコンチェルト及びリサイタルにてマリインスキー劇場デビューを果たす。2016年のデビュー・リサイタルは、サントリーホール2000席が完売し、圧倒的な演奏で観客を惹きつけた。また8月の3夜連続コンサートをすべて違うプログラムで行い、各日のコンサートの前半部分をライヴ録音し、その日のうちに持ち帰るというCD付プログラムも話題になる。3日間の追加公演も行い、新人ながら3,000人を超える動員を実現する。2017年4月には佐渡裕指揮、東京シティフィル特別演奏会の全国12公演のソリストを務め全公演完売の中、各地でセンセーションを巻き起こす。6月にはNHK交響楽団との現代曲への挑戦し、初の全国リサイタル・ツアー13公演は全公演完売し、2018年の夏のリサイタル・ツアー19公演も好評のうちに終了した。
2019年のシーズンは室内楽の新たな提案をするべく展開していく。

デビューから4年、コンサートのみならず「題名のない音楽会」「情熱大陸」等メディアでも多数取り上げられるなど、今、もっとも勢いのあるピアニストとして注目されている。現在、ショパン音楽大学(旧ワルシャワ音楽院)にてピオトル・パレチニに師事。また、TVアニメ「ピアノの森」に阿字野壮介のメインピアニストとして参加している。

岡本誠司(Seiji Okamoto | ヴァイオリン)
1994年生まれ。2014年、第19回バッハ国際コンクール(ドイツ・ライプツィヒ)のヴァイオリン部門にてアジア人で初めて優勝、併せて聴衆賞を受賞。2016年、第15回ヴィエニャフスキ国際コンクール(ポーランド)第2位。同年、第6回仙台国際音楽コンクール第6位、聴衆賞。2019年5月、エリザベート王妃国際コンクール(ベルギー)でのファイナリスト入賞など国際コンクールでの入賞歴多数。東京藝術大学を卒業後、現在はベルリンのハンス・アイスラー音楽大学の修士課程で研鑽を積みながら、日本およびヨーロッパで精力的にソロ・室内楽の演奏活動を行っている。

森田啓佑 (Keisuke Morita | チェロ)
1997年生まれ。
高校在学中に第68回全日本学生音楽コンクールおよび第83回日本音楽コンクールを史上初めて同時に制す。20才メモリアル・リサイタル・シリーズにて表現力豊かな品のある音楽と高評され、第27回青山音楽賞・新人賞を受賞。また第45回日本ショパン協会賞を弦楽器として初受賞。ドイツのザール音楽大学にてG.リヴィニウス氏に師事。

Information
MLMナショナル管弦楽団のツアー
2019.7/24(水)15:00 神奈川/秦野市文化会館
7/25(木)18:30 栃木/足利市民プラザ 文化ホール
7/26(金)19:00 東京/サントリーホール
7/27(土)14:00 宮城/多賀城市民会館
7/31(水)19:00 長野/サントミューゼ 大ホール(上田市交流文化芸術センター)
※ツアーの詳細は以下ウェブサイトでご確認ください。
https://www.kyoheisorita.com/mlm/#schedule

CD『ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番/ピアノ・ソナタ第2番』
反田恭平(ピアノ)
アレクサンドル・スラドコフスキー(指揮)
ロシア・ナショナル管弦楽団
日本コロムビア
COCQ-85458 ¥3000+税