バッハをめぐるジャズ(2)| クラシック・ファンのためのJazz入門 第4回

text:藤本史昭

前回取り上げたジャック・ルーシェやオイゲン・キケロのアルバムは、いってみればジャズ・バッハの幼年期的作品でした。発想は野心的だし、音楽的な質も決して低くはない。しかしそのアプローチは、バッハの原曲のメロディやリズムをジャズっぽくフェイクしたり、即興し易いようにハーモニー進行を置き換えたりと、いたってシンプルなもので、極端にいえばガーシュウィンの曲を自分の解釈で演奏するやり方とそう変わりはなかったわけです。

今回はそこからもう少し進化(深化?)した、バッハの原曲と密接なつながりを保持しつつ、独創的なジャズ表現を実現した作品をご紹介したいと思います。

ジョン・ルイスというピアニストがいます。1940年代の半ばからディジー・ガレスピーやチャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィスといった大物と活動を共にしてきた人ですが、このルイス、当時の黒人ジャズマンとしては異例といってもいいほどクラシックに造詣が深く、早い時期からクラシック的アプローチをジャズに持ち込んでいました。

その最大の成果が、彼が実質的リーダーをつとめたモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)です。室内楽的なアンサンブルとブルース・フィーリングを美しく共存させたこのグループは、ジャズとして一級品でありながらBGM的な聴き易さもあるところが受け、大きな人気を博しました。

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この記事を書いた人

藤本 史昭(Fumiaki Fujimoto)

1961年、宮崎市生まれ。大学卒業後クラシック音楽専門誌編集部に入社しカメラを始める。1991年からは『スイング・ジャーナル』誌ディスク・レビュアーを担当。以降ジャズ誌やwebマガジンの記事、CDのライナーノーツを多数執筆。現在は『JaZZ JAPAN』誌に寄稿する一方で、クラシック音楽関連の写真家としても活動している。共著に『200DISCS ブルーノートの名盤』『菊地成孔セレクション〜ロックとフォークのない20世紀』(いずれもGakken)、『文藝別冊 セロニアス・モンク』『文藝別冊 チャーリー・パーカー』『文藝別冊 ジョン・コルトレーン』(いずれも河出書房新社)等がある。