【レポート】丸善雄松堂 知と学びのコミュニティ
芥川龍之介とストラヴィンスキー

芥川龍之介とストラヴィンスキー 
~「音楽」×「文学」掛け算で見えてくるもの~

“クラシック”と呼ばれるほど、歴史の長い「音楽」。古代メソポタミア文明から存在する、言葉で物語を紡いだ「文学」。この二つにどのような関係があるのか。「人」に焦点を当てながら「音楽」と「文学」の関係性を探るトークイベントシリーズが始まりました。

講師は、『クラシック名曲全史』の著者で、音楽プロデューサーとして活躍されている松田亜有子さん。作曲家、そしてその作曲家を愛した文学作家を掛け算し、彼らの物語からクラシック音楽を浮き彫りにしていく3回シリーズのレクチャーです。
その第1弾は、「芥川龍之介とストラヴィンスキー」。近代日本の文学史を語る上で欠かせない芥川龍之介と、彼の生きた時代には新進気鋭の作曲家だったストラヴィンスキーの関係を掘り下げます。

レクチャーが行われたのは11月7日。場所は市ヶ谷にあるDNPプラザ。このイベントは丸善雄松堂が主催している人気講座〈知と学びのコミュニティ〉の一環で、「ぶらあぼ」の東京MDEと大日本印刷とが協力して実現しました。

松田亜有子さん

まず冒頭は松田さんご自身の経歴のご紹介から。松田さんは、祖母が国語辞典の編纂に携わっていたことから自宅にいつも書籍が山積みで、大の読書家だったとのこと。クラシック音楽に目覚め、ピアノとオルガンを専門に学ぶも、「クラシック音楽が数百年という歴史を紡ぐ過程でどんな役割を果たしてきたのか」、そのような点に強い関心を寄せながら音楽学校で学ばれました。

今回のテーマとなる芥川龍之介が作家として活躍していた20世紀初頭の日本は、まだ西洋音楽が入ってきたばかりでしたが、芥川家にはモーツァルトやショパンといったクラシックのレコードがすでにあったそうです。龍之介は、その中からストラヴィンスキーを選んで聴いていました。

芥川家所有のレコードには、ストラヴィンスキー「火の鳥」「ペトルーシュカ」、リヒャルト・シュトラウス「サロメの踊り」、モーツァルト「魔笛」〈序曲〉などがあります。なかでも「火の鳥」は、芥川の長男・也寸志が著書の中で、学校の行き帰りに口ずさむほど聴いていた、と当時を回顧しています。「いかに前衛的なセンスの持ち主であったかがうかがわれます」との松田さんの解説に、受講者のみなさんもさかんにうなずいていました。

では、なぜ芥川はストラヴィンスキーを好んで聴いていたのでしょうか。「19世紀末を代表する文学を愛読していた彼は、世紀末の空気をまとったそれらの作品のように、ストラヴィンスキーの音楽に世紀末を感じ取っていたのではないでしょうか。退廃的なだけではなく最後には光を感じる、そういったフランスの世紀末を象徴する文学作品と呼応するような音楽を愛していたのではないかと思われてなりません」と松田さんは語ります。

ここで、芥川龍之介と音楽を語る上で欠かせない、長男・也寸志の夫人、芥川真澄さんがゲストとして登壇されました。也寸志との数々のエピソードや龍之介の小説についてお話が進みます。

松田亜有子さん(左)、芥川真澄さん

古典の本をベースに作品を書く龍之介と、「過去の偉大なる作家の作品を全て吸収した上に音をつづっていけばよい」と言ったストラヴィンスキー。この両者の共通点は新古典主義ではないかと松田さんは解説します。龍之介がストラヴィンスキーを好んだもう一つの理由として、「ストラヴィンスキーの音楽は、芥川先生の新古典主義と通じるものがあるように思われます」と考察していました。

最後に真澄さんが、サントリーホールの建設について、多目的ホールではなく音楽専門ホールにしてほしいと当時のサントリー社長・佐治敬三さんに也寸志が訴えたエピソードを披露。龍之介・也寸志、親子二代にわたって日本のクラシック音楽界に大きな影響を与えた存在であることが分かります。

音楽と文学を掛け算する、ジャンルを超えた本講座。受講者のみなさんは、数々の貴重なエピソードも含めて最後までメモを取り、熱心に耳を傾けていました。

次回、第2弾は1月27日(月)開催「シェイクスピアとベートーヴェン」です。今年生誕250年を迎えるベートーヴェンと、イギリスの偉大な劇作家シェイクスピア。どんな掛け算になるのか期待が高まります! トークイベントの最後には、東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者(クラリネット、オーボエ、ファゴット)による演奏も。

Information

知と学びのコミュニティ 「音楽」×「文学」掛け算で見えてくるもの
第2弾「シェイクスピアとベートーヴェン」

2020年1月27日(月)19:00〜
DNPプラザ 2階(東京都新宿区市谷田町1-14-1 DNP市谷田町ビル)

講師:
松田亜有子(音楽プロデューサー、アーモンド株式会社代表取締役)

ゲスト:
クラリネット:アレッサンドロ・ベヴェラリ
オーボエ:荒川文吉
ファゴット:廣幡敦子
※トークイベントの最後に東京フィルハーモニー交響楽団の首席奏者による演奏をお贈りします。

参加費:
一般:2,500円 
「La Valse by ぶらあぼ」会員:1,000円

※「La Valse by ぶらあぼ」に会員登録(無料)をすると、通常価格2,500円のところ会員価格1,000円となります。

*イベント詳細、お申し込みはこちらよりご確認ください。
https://member.ebravo.jp/7393/


profile
松田亜有子 (Ayuko Matsuda)

アーモンド株式会社代表取締役。株式会社経営共創基盤(IGPI)顧問。
活水女子大学音楽学部ピアノ・オルガン学科を首席で卒業後、長岡市芸術文化振興財団、東京フィルハーモニー交響楽団で企画・広報を担当。日本郵政株式会社、株式会社経営共創基盤(IGPI)を経て、2013年に東京フィルハーモニーに復帰。
広報渉外部長として「創立100周年記念ワールドツアー」「日韓国交正常化50周年記念公演」「日中国交正常化45周年記念公演」等で、世界各地への広報や、主催者・協賛者との交渉を務める。
2018年11月アーモンド株式会社を設立、現任。
ビジネスエリート向けに、ぜひ知っておきたいクラシック音楽の名曲をセレクトし、その聞きどころや創作秘話を紹介した『クラシック名曲全史』(ダイヤモンド社)が10月3日より刊行。


【書籍情報】


クラシック音楽全史
ビジネスに効く世界の教養

松田亜有子 著
ダイヤモンド社 
¥1,600(税抜)

 

 


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