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ハビエル・カマレナ(テノール)| いま聴いておきたい歌手たち 第13回
text:香原斗志(オペラ評論家) 力強いアジリタと余裕の超高音 ファン・ディエゴ・フローレスがヴェルディやプッチーニ、あるいはグノーやマスネなどのフランス・オペラにレパートリーを拡大し、ロッシーニやベッリーニを歌う機会が少なくなった分、その穴を埋めているのがメキシコ出身のテノール、ハビエル・カマレナである。実際、メトロポリタン歌劇場(MET)のスターになったのも、フローレスの代役として登場し、聴 […] -
ステファン・ポップ(テノール) | いま聴いておきたい歌手たち 第10回
text:香原斗志(オペラ評論家) パヴァロッティに近いテクニック だれかと顔が似ていると思うと、声のトーンや話し方まで似ている、ということがよくあるが、この人の場合、体型がルチアーノ・パヴァロッティによく似ていて、歩き方も、手の動かし方も、首の振り方も近しい。さらには顔までが似た雰囲気で、想像がつくと思うが、歌い方もパヴァロッティを彷彿とさせるのである。 テノールの声が空気をつんざくように客席に […] -
シャビエル・アンドゥアガ(テノール) | いま聴いておきたい歌手たち 第9回
text:香原斗志(オペラ評論家) 24歳ですでに重ねている国際的キャリア 今回は「先物買い」の楽しさを提供したい(今後もときどき提供する)。1995年6月5日生まれ。現在24歳。日本人の歌手や歌手の卵なら大学か大学院で勉強中であり、これから留学を検討するかどうかという年齢である。しかし、シャビエル・アンドゥアガは、すでに国際的なキャリアを歩みはじめている。 2020年前半の予定だけでも、パリのオ […] -
又吉秀樹(テノール)& 山本耕平(テノール)インタビュー 〜東京二期会《天国と地獄》
東京二期会がこの11月に上演するのは、鵜山仁演出による新制作の《天国と地獄》。ギリシャ神話の「オルフェウスとエウリディケ」を下敷きにしたオッフェンバックの傑作オペレッタにオルフェ役で出演するのは、又吉秀樹と山本耕平という、今もっとも脂の乗っているふたりのテノールだ。実は、東京藝術大学の同級生でもあるふたりに、役にかける意気込みや、お互いへの思いなどを語ってもらった。 取材・文:室田尚子 写真:寺司 […] -
ヴィットリオ・グリゴーロ(テノール)| いま聴いておきたい歌手たち 第7回
text:香原斗志(オペラ評論家) 上等の樽で熟成した上質のワイン 味つけが濃くて、食が進まないどころか、食後も異様にのどが渇いたり、胃がもたれたりする料理がある。一方で、同じくらい濃いのにいくらでも食べられて、胃もたれと無縁の料理もある。前者は素材が悪いか、料理人の腕が悪いか、添加物だらけか、あるいは、それら複数の組み合わせだろう。後者は、腕のいい料理人がとびきりの素材を使い、添加物なども使わず […] -
マキシム・ミロノフ(テノール)| いま聴いておきたい歌手たち 第5回
text:香原斗志(オペラ評論家) ロッシーニが望んだテノール ベッリーニの『追憶 LA RICORDANZA』とロッシーニの『これがロッシーニだ! Questo è ROSSINI』。マキシム・ミロノフが自主制作したILLIRIAレーベルの『室内歌曲集』がすばらしい。 まず、彼の声のクオリティがピカイチなのだ。最高の羽毛のようにやわらかく、艶があり、官能的な色彩を帯びていて、同時に陰影がある。だ […] -
フアン・ディエゴ・フローレス(テノール)| いま聴いておきたい歌手たち 第1回
text:香原斗志(オペラ評論家) いまも維持される超人的技巧とエレガンス オペラは奥が深い。総合芸術だから音楽にとどまらず、色恋沙汰の料理の仕方とか、舞台装置のでき具合だとか、幅広く興味をそそられる。とはいっても、「セリフが歌われる音楽劇」である以上、舞台や演奏に満足できるかどうかは、とどのつまり歌手次第である。 天賦の楽器、すなわち恵まれた肉体を磨きあげ、鍛錬を重ねた歌手の声は、それ自体に魅了 […]